「物的限界」を突破し、製造業を新次元へ
AIの進化によって「知能」の限界が次々と突破される一方で、モノづくりのスピードは過去30年間ほとんど変わっていません。AIが理論やアイデアを爆発的に生み出すほど、「考えたこと」と「物理世界に実装すること」の乖離は大きくなっています。キャディはこれを「物的限界」と定義し、その突破が人類が次に挑むべき課題であると位置づけています。
この「物的限界」を突破し、「物的イノベーションを10倍加速する」というビジョンを実現するため、キャディは「製造業AIデータプラットフォームCADDi」を、データレイヤー、セマンティックレイヤー、ディスカバリー&エージェント、ワークフロー・プロダクトの4層からなる垂直統合型の次世代の産業OSへと進化させることを発表しました。

共同創業者でCTOの小橋氏は、製造業データの意味づけを担う技術思想と開発背景について解説しました。
物理の世界には「Undo(やり直し)」が存在せず、やり直しの効かない判断には常に説明責任が伴います。そのため、人がどのようにデータを活用するかを意識した設計が不可欠であると指摘。ベテラン社員が長年の経験で脳内に築く「データの地図」を言語化し、新人でも同じ精度で業務を遂行できる仕組みが「セマンティクス(意味づけ)」であると語りました。

この10年ビジョンの実現に向け、10年後にはAIエージェントの支援のもとに1人が10人力の仕事をこなせる未来像を提示し、次世代の産業OSとして製造業の変革を共に進め、業界構造の根幹からの変革を進めていく方針が示されました。
日本を代表する経営層による基調講演
カンファレンスでは、日本を代表する製造業経営層による対談セッションが複数開催されました。様々な業界で「変革」に挑戦してきた方々の軌跡や経営論、そして製造業の飛躍に向けた展望が語られました。
変わらない組織に火をつけるには?〜非連続な成長の実現に向けた「競争戦略」と「組織OS」の刷新〜

競争戦略を専門とする経営学者・楠木氏がモデレーターを務め、非連続な成長に不可欠な競争戦略および組織OSの刷新について議論が展開されました。
ロッテホールディングスの玉塚氏は、国内市場における販売と製造のサイロ化(部門間の連携不足)を指摘。データ一元化やAI・DX活用を通じた組織構造とカルチャーの抜本改革、そして実店舗での感動体験を追求したメガブランドのグローバル展開戦略について言及しました。
LIXILの瀬戸氏は、M&Aにより巨大化した組織におけるオペレーティングシステムの多様性の課題を提示。組織OSを3つの行動規範へと刷新し、環境・社会問題への貢献を軸とするパーパス(存在意義)を策定・浸透させることで、新たな企業文化の醸成を推進したことを明らかにしました。
流行に流されないビジョンで、お客様と現場に向き合うには?〜社是と行動理念で貫く、未来を変える大胆な意思決定〜

キャディの加藤氏がモデレーターを務め、スズキの鈴木氏は100年を超える歴史の中で培われた社是および行動理念を根幹とした、未来を変革する大胆な意思決定の軌跡について語りました。
スズキの強みは、「お客様の立場になって価値ある製品を作ろう」を最初に据える3つの社是と、「小・少・軽・短・美」「現場・現物・現実・原理・原則」「中小企業型経営」から成る行動理念が組織全体に深く浸透している点にあります。鈴木氏自身が質素倹約を徹底し、無駄の排除を通じて“ちょうど良い”かつ高品質なモビリティを提供するブランド価値を確立しています。
また、経営陣が先頭に立って始めたペーパーレス化やデジタル化の断行、1980年代からのインド市場への巨額投資に代表される緩急の効いた投資判断が、非連続な成長を支えてきたと述べられました。
イノベーター講演:業界の最前線からの挑戦
業界の最前線で「未来への挑戦」を続けるイノベーター企業や、組織を勝利へ導く著名な指導者を招き、特別対談が実施されました。「困難な壁をどう乗り越えたか」「組織をどう動かしたか」といった、変革に向けたリアルな挑戦の軌跡に迫る内容でした。
激動の時代を勝ち続ける『戦略的パートナー』としての在り方とは?〜共に進化を加速させるサプライヤーの挑戦〜

中国メーカーの圧倒的な開発速度や価格訴求力、欧州勢の隆盛など、自動車・モビリティ産業は未曾有の変革期に直面しています。この激動期をいかに打開し、次世代における優位性を獲得すべきかについて、デンソーの野澤氏およびミクニの生田氏による議論が展開されました。
デンソーの野澤氏は「技術で勝つ」ことを方針に掲げ、上流の素材・要素技術と下流の車両システム統合の両輪を強化している点や、設計精度の向上、技術者がより付加価値の高い業務に注力するための取り組み事例を紹介しました。
ミクニの生田氏は、フレキシブル生産を基盤とした変種変量生産や補用対応への特化に加え、量産販売後も補用・アフターマーケット領域で価値を創出し続ける「バリューチェーンプロフィット」の実現が、今後の利益成長の重要な鍵になるとの見解を述べました。
新技術の「社会実装」を阻む壁をどう壊すか?〜新しいモノづくりの形を描く技術経営と「アジャイル・ガバナンス」〜

技術の進化が急速であっても、それを現実社会へ実装する段階には多数の障壁が存在します。東芝の辻氏、ヤンマーホールディングスの奥山氏、自由民主党の平井氏の3名が、その壁を壊し、新たなモノづくりの形を描くための挑戦を語りました。
平井氏は、各国の新技術社会実装における考え方や、ブータン王国におけるGMC特区の事例を引き合いに出し、前例踏襲主義を脱却して迅速に試行錯誤から学習を深める「責任あるアジャイル・ガバナンス(柔軟で迅速な意思決定と実行を促す統治の仕組み)」の必要性を提言しました。
辻氏は、自前主義へのこだわりによってスタートアップ企業の先端技術獲得に遅れをとった実体験を提示し、外部技術の迅速な導入姿勢への転換について言及しました。
奥山氏もまた、過去のM&Aにおける失敗事例を振り返りつつ、朝令暮改を厭わず即座に是正することの重要性と、組織の温度感を注視しながら柔軟かつ有機的に施策を複合させるアプローチについて述べました。
参加者の声とイベントの今後
講演の他にも、展示や新プロダクトデモ、ユーザー企業の使用環境が見られる裏側潜入ツアーなどが実施され、会場は熱気に包まれました。

参加者からは、「物的イノベーションは製造業の喫緊の課題。ゴールを明確にしその達成手段についてデモを交えた説明は臨場感があり大変分かり易く、また”共に変革したい”という熱意を感じた。」「製造システム全体のAI活用構想に大きな可能性を感じ、将来の製造業の在り方にワクワクする期待感と共に、それに向けた具体的なステップをイメージすることができた」といった声が寄せられました。
キャディはこれからも、モノづくり産業のポテンシャル解放に向け、製造業の変革の一助となる刺激や出会いの場を提供していくとのことです。

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