小売業界を悩ませる「欠品」と「過剰在庫」
欠品と過剰在庫が世界の小売業に年間1.8兆ドルもの損失をもたらしているという事実は、多くの企業にとって無視できない課題です。中でもファッション業界は大きな打撃を受けており、サイズ別の誤った在庫購入は平均で最大20%もの利益損失につながると指摘されています。
さらに、ファッション在庫のうち定価で販売されるのは約60%にとどまり、残りの40%は値引き販売され、それでも売り切れない場合があるとのこと。これらの数値は、計画判断の誤りが企業の粗利率と売上の双方に深刻な影響を与えることを示しています。

なぜこのような問題が起きるのでしょうか。その根底には、拡大する品揃えや複雑なサイズ構成、短期間のシーズン、そして制約の多い調達網があります。例えば、メンズ、ウィメンズ、キッズの各版を持ち、それぞれ12~15サイズ、7色を展開する一つのスニーカースタイルは、チャネル別の違いを考慮する前でも「400超のSKU(Stock Keeping Unit:在庫管理単位)」になります。消費者需要の兆候が現れる何カ月も前に、多くの意思決定を確定しなければならない現状が、この複雑さをさらに増幅させています。
従来の計画手法の課題
従来の計画手法では、商品企画から需要計画、供給計画、そして調達・配分へと順送りで情報が引き継がれていました。しかし、この「順送り計画」には大きな問題があります。各段階が異なるシステムと前提で動くため、上流・下流の制約が十分に可視化されません。
多くの計画チームは、スプレッドシートや手作業による突合、版管理に追われ、長い計画サイクルの中で作業が分断されています。フットウェア・アパレル業界では、需要をスタイル×色水準で集約し、サイズ水準へ分解し、工場の最低発注数量を満たすために地域需要を再集約するといった複雑なプロセスが必要です。この反復が手作業に依存すると、一部サイズの過剰供給と別サイズの不足につながってしまいます。

A.T. カーニーが提唱する「統合計画」とは
このような課題に対し、A.T. カーニーは「統合計画」への転換を提言しています。これは、商品戦略、需要予測、供給計画、在庫判断、実行シグナルをシーズン全体でリアルタイムにつなぎ、端から端までの可視性、制約を織り込んだ供給計画、シナリオ・モデリングを組み合わせるものです。
高度なアルゴリズムやAI駆動の需要感知は予測精度を大きく改善する可能性を秘めていますが、それが供給制約、在庫方針、商品企画判断と切り離されたままでは効果は限定的です。統合計画は、不確実性そのものをなくすものではありませんが、実際の受注シグナルに応じて需要、サイズ構成、供給制約を継続的に再調整する運営モデルとして機能します。

変革への具体的なステップ
統合計画への変革は、全面的なシステム置換から始める必要はありません。まずは、判断の整合が失われて粗利リスクが生じる場所を特定し、サービス水準、コスト、運転資本に直結する判断から接続していくことが重要です。その上で、シナリオ・モデリング、需要・供給の同期、共通定義と計画カレンダー、経営支援と規律あるガバナンスを意図的な順序で積み上げていくことで、計画を競争優位の源泉へと変革できるでしょう。
論考詳細とA.T. カーニーについて
この注目すべき論考は、以下のURLから詳細を確認できます。
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論考名:『サイズ、スタイル、シーズンが増殖するとき――なぜフットウェア・アパレルの計画は規模拡大で破綻するのか』
A.T. カーニー(グローバル・ブランド名:Kearney)は、100年にわたり世界有数の経営コンサルティングファームとして、Fortune Global 500企業の4分の3以上をはじめ、世界各国の政府機関に信頼されるパートナーであり続けています。日本には1972年に進出し、主要産業のリーディングカンパニーに、戦略策定から変革の実行まで一貫した支援を提供しています。
- A.T. カーニー公式サイト:https://www.jp.kearney.com/
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